作成者からのメッセージ
東伊豆地域は,東伊豆単成火山群(伊豆東部火山群)という活火山の分布域です.この火山は過去15万年間にわたって活動を続け,陸上・海底をふくめて約100個の小火山体を形成してきました.最近4万年間でみると16回の噴火が生じ,約2500年に1度の割合で噴火が起きてきたことになります.
1989年7月13日に伊東沖の海底で噴火した手石海丘も,東伊豆単成火山群の一員です.私たちは,およそ2500年ぶりの噴火の瞬間に立ち会ったのです.
このような東伊豆単成火山群の噴火頻度は,日本の他の活動的火山に比べると,とても小さいものです.言いかえれば,東伊豆単成火山群はめったに噴火しない火山であり,ふだんは美しい景観や温泉をはじめとする豊かな恵みを私たちにもたらしています.あのような変化にとんだ風光明媚な自然景観や豊かな温泉は,そこに火山が存在したからこそ生まれたものなのです.
火山というものは,その99%以上が私たちに安らぎと利益をもたらす自然の賜物であり,ほんの1%以下が人間社会に不幸をもたらす「闇の部分」であると言ってもよいのです.
ここに示すようなハザードマップを通じて,火山の「闇の部分」=火山のもたらしうる危険の様相や規模,を正しく把握することはとても大切なことです.しかし,それを強調し過ぎるあまり,平常時の火山がもたらし続ける「光の部分」を忘れてしまうことは誤りです.
火山がもつ「光の部分」(こちらが大部分)も「闇の部分」も合わせた形で,火山というものを正しく受けとめて深く理解することが,私たちに自然と向き合う健全な文化をもたらし,ひいては災害にたいして頑強な社会を築くことにもつながるのです.
あわせて読んでください:
●やさしい火山ガイド:伊豆半島の火山―その生い立ち・現在・未来―
●伊東市の未来のために:火山がつくった伊東の大地と自然―火山の恵みを生かす文化構築の提案―
●解説記事:伊豆半島の火山とテクトニクス
●論文:伊東沖群発地震の歴史
●専門家向け解説(英文):東伊豆単成火山群(伊豆東部火山群)