伊東市地域噴火災害予測支援図(簡易版ver.1998/4/24)

・伊東沖の群発地震は時期ごとに場所を変えて起きる場合が多いが,頻繁に起きる場所は川奈崎沖の北西―南東に伸びる領域にほぼ限られている.ここを暫定群発地震震央分布域とし,その領域内を噴火開始箇所と考える(ただし,領域内のどこで起きるかは不明である.手石海丘がそうであったように,噴火位置が多少領域内から外れる場合もあり得る).

・水蒸気マグマ噴火の発生限界水深を,伊藤(1993)にしたがって一応120mと考える.

・「弱い水蒸気マグマ噴火」(山元,1994のweak phreatomagmatic explosion)を想定する.「弱い水蒸気マグマ噴火」による噴煙(tephra finger jet:火山灰・火山礫・火山弾・水の混ざり合った鶏の尾状の黒色の噴煙で,火口から弾道放出される)の最大到達距離は350m,ベースサージの最大到達距離は3km(最大到達標高は不明だが,標高50mまではかなりの被害を受けるだろう).

・なお,山元(1994)の「強い水蒸気マグマ噴火」を想定した場合,ベースサージの到達距離は6km以上,到達標高は200m以上となる場合もある.

・噴火に津波がともなう場合もあり得るが,遡上高などの定量的な検討はできていない.

・過去の噴火にともなって噴出したマグマの性質(Hamuro, 1985)にもとづいて,玄武岩/安山岩領域のおおよその境界位置を示した.一般に,安山岩質マグマは玄武岩質マグマより粘性が高く,より爆発的な噴火をもたらすことが多い.

 文 献
Hamuro, K. (1985) Petrology of the Higashi-Izu Monogenetic Volcano Group, Bull. Earthq. Res., Univ. Tokyo, 60, 335-400.

伊藤順一(1993)新島火山の噴火災害予測図(解説).文部省科研費自然災害特別研究,計画研究「火山災害の規模と特性」報告書,287-294.

山元孝弘(1994)マグマ水蒸気爆発のメカニズム.地質学論集,no.43,63-72.

(作成者 小山真人,静岡大学教育学部総合科学教室)1998.4.24


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