「新編日本被害地震総覧 増補改訂版」における注意を要する地震日付

「新編日本被害地震総覧 増補改訂版」の地震日付のすべてについて,「日本暦日原典第4版」にもとづく西暦換算のチェックをしたので報告します.

なお,この10項目を東大出版会に伝えておいたところ,最新の第5刷(1999/4/9発行)では,5)と9)をのぞく8項目がその通りに訂正されています.

1)地震番号008 美濃M7.9

 被害地震総覧の745/6/15(グレゴリオ暦)は,745/6/5が正しいと思われます.宇津の表(朝倉書店「地震の事典」の付表)ではその通りになっています.

2)地震番号034と035の間の無番号地震

 被害地震総覧の1042/1/21(グレゴリオ暦)は,1042/1/22が正しいと思われます.この地震は,宇津の表には掲載されていません.

3)地震番号062

 永享五年九月十六日の南関東地域の大地震は,被害地震総覧や宇津の表で1433/11/7(グレゴリオ暦)とされています.しかし,暦日原典によれば,この年の九月は,当時の暦作成者の誤り(八月・九月を大の月・小の月とすべきところを小の月・大の月としてしまった)によって朔日が1日早まっているとされています*.したがって,1433/11/6(グレゴリオ暦)が正解です.

*この換算については日本暦日原典の使い方に注意が必要です.暦日原典の西暦年月日は,たんなる天文計算結果にすぎません.西暦年月日の補正は,ところどころに書き込んである注記によって自分でおこなわないといけません(暦日原典冒頭の凡例に明記されています).

4)地震番号079と080の間の無番号地震

 1590/3/31は,1590/3/21が正しいと思われます.この地震は,宇津の表には掲載されていません.

5)地震番号133の直前の無番号地震

 1682/12/12は,1682/12/13が正しいと思われます.宇津の表ではその通りになっています.

6)地震番号162と163の間の無番号地震

 享保三年十月四日とされていますが,西暦換算結果が示されていません.換算結果は1718/10/27です.また,享保三年十月四日が誤りでなければ,この地震はこの場所に記載されるのが適当でなく,地震番号166の2つ前に記されるべき地震と思われます.

7)地震番号202の2つ前の無番号地震

 1770/10/23は,1770/10/25が正しいと思われます.この地震は,宇津の表には掲載されていません.

8)地震番号219 上総M6.5

 享和元年四月五日(1801/5/27)とされていますが,享和元年四月五日は正しくは1801/5/17です.いっぽう宇津の表は,この地震を享和元年四月十五日としています.四月十五日ならば1801/5/27が正しい換算結果です.

9)地震番号236の1つ前の無番号地震

 1829/6/25は,1829/6/26が正しいと思われます.この地震は,宇津の表には掲載されていません.

10)地震番号281-1 小田原M6.0-6.5

 1870/5/20は,1870/5/12が正しいと思われます.宇津の表ではその通りになっています.

 以上,10ヶ所です.ただし,原史料に遡って元の日付をチェックすることはしていません(被害地震総覧には原史料名が記載されていないため,遡及調査は困難です).あくまで換算上の誤りと思われるものを指摘しただけです.誤りの原因としては,誤植の他に,暦日原典をもちいないで三正綜覧などの古い暦換算表をもちいた結果が考えられますが,そこまでのチェックはできていません.


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