静岡新聞 時評(2019年2月13日)

スンダ海峡で何が起きたか?

 留意すべき火山津波

小山真人(静岡大学防災総合センター教授)

 インドネシアのスマトラ・ジャワ島間のスンダ海峡で昨年12月22日、津波が発生し、犠牲者400人を超える大災害となった。地震に伴う津波ではなかったために警報が出せず、被害を大きくしたとみられる。
 津波の発生源にはクラカタウという有名な火山がある。1883年に大噴火を起こし、元あった島の大半が海中に没したが、その後も続いた噴火によって小さな火山島が海面上に姿を現した。アナク・クラカタウと名付けられたその島の噴火は、その後も断続的にあり、直径2km、標高300m余りの島へと成長した。今回の津波前にも噴火が起きていたが、それほど激しいものではなかった。
 ところが、津波翌日の調査で、島の南西がえぐれたように海中に没し、標高が200m以上低くなったことが明らかになった。その形状変化から「山体崩壊」が起きたことは間違いない。山体崩壊は、山の一部が突然大きく崩れる現象であり、世界中の多くの火山で発生例がある。
 アナク・クラカタウ島は、ここ100年余りの噴火で海底に火山弾や火山灰が急速に積み重なり、陸地ができた後は溶岩が何枚も流れて山をつくった。つまり、軽い火山砂礫の上に重く厚い溶岩がのる不安定な構造をしていた。その危険性は2012年に発表された論文で指摘され、南西側に崩壊しそうなことや、それに伴って発生する津波の規模まで予測されていた。不幸なことに、予測は的中した。
 しかしながら、こうした津波の発生日時を予知して警報を出すことは困難である。唯一可能と思われるのが、危なそうな火山島や海底火山の周囲の海上に津波監視計を浮かべ、津波発生をとらえたら即時に警報を出すことだろう。ただし、陸に近い火山では津波がすぐに対岸に到達するため、警報が間に合わない。
 1989年に伊豆東部火山群(手石海丘)の海底噴火が伊東沖で生じた。幸いにして噴火は小規模で短く、被害はなかった。しかしながら噴火が継続し、ある程度の山体をつくれば、その崩壊による津波の可能性が生じる。また、山体形成に至らない場合にも、爆発や爆風による大波の発生が懸念される。今後の噴火も市街地の直近で起き、火口から3〜3.5km以内が危険範囲と予測されているが、噴火に伴う津波・大波に対する検討は十分でないのが実情である。

 


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