静岡新聞 時評(2014年8月20日)

伊豆半島ジオパーク

  世界への挑戦なるか

小山真人(静岡大学防災総合センター教授)

 伊豆半島が日本ジオパークに認定されてから9月で丸2年になる。ジオパークとは、大地(ジオ)が育んだ貴重な資産(有形・無形を問わない)を多数備えた地域が、それらの保全・活用によって経済・教育・文化活動を高めていく仕組みであり、その資産価値のほか運営実態・人材・活動実績の総合評価によって認定を受ける。つまり、価値ある自然の資産をベースとした地域振興を持続的に実現している「モデル地区」がジオパークである。日本ジオパークは日本ジオパーク委員会が認定し、上位の世界ジオパークはユネスコの下部組織である世界ジオパークネットワークが認定する。現時点で日本ジオパークが33地域あり(うちの6地域が世界ジオパークにも認定)、29ヶ国に100地域の世界ジオパークがある。
 伊豆半島ジオパークは、地元の7市8町が共同設置した推進協議会によって運営され、研究員2名を含む専任職員7名が献身的に種々の業務をこなしている。見どころ(ジオサイト)に設置された解説板の数は100を超え、遊歩道等の整備も進んだ。また、小さいながらもジオパークのビジターセンターが半島各地に開設され、修善寺には中央拠点施設の整備も決まった。
 これに加え、地元にはジオパークを支える人々が確実に増えてきた。伊豆の風景や風土を読み解くジオガイドが計画養成され、いまや100名を超える認定ジオガイドがいる。彼らの手によって徒歩・船・ダイビングなど様々な形のツアーが数多く実施されて好評を博すとともに、専門知識を活かして地域の防災リーダーとして活躍する者もいる。伊豆総合高校、松崎高校など地元の学校にもジオパークに関する教育が浸透してきた。その活動が評価された伊豆総合高校はユネスコスクールの認定を受けた。さらに、一般市民の手によって、地層や岩石を模したお菓子「ジオガシ」が開発されたり、絵本が出版されたり、「ジオ生け花」の展覧会が開かれるなどの文化活動も芽生え、国際的な評価を浴びつつある。このように、伊豆を愛する誰もが自分の職能や得意技をジオと結びつけることによってジオパークに参加でき、その活動全体がジオパークの価値を決める。トップダウンで与えられる世界遺産よりも高次の取り組みと言ってよい。
 こうした数々の資産と実績を手に、伊豆半島はついに世界ジオパークへの推薦を受けるべく、国内予備審査を受けた。その結果発表は今月28日である。合格となれば来年夏にかけて国際審査が行われる。

 


もどる