静岡新聞 時評(2009年5月19日)
小山真人(静岡大学防災総合センター教授)
昨年5月15日の本コラムで「しずおか防災コンソーシアム」の構想について紹介した。これまで個別に活動していた静岡県内の大学・行政・防災関連組織が、ひとつの共同事業体(コンソーシアム)を形成して様々な連携活動をおこなうことで、地域の防災力を一層高めていくことを意図したものである。また、その事業体の事務局として、専任教員を配置した「静岡大学防災総合センター」を設置準備中であるとも書いた。この両者の、その後の経緯と現状について述べたい。
しずおか防災コンソーシアムについては、まず核となる県内6大学と県との間で防災に関する協力協定が昨年12月16日に締結され、その後の準備会合によって細部が煮つめられた末、先月21日に発足式典がおこなわれた。当初の構想と目立って異なる点は、一大学内の小組織が事務局を司るのではなく、より大局を見据えて県の危機管理局に事務局を置くことになった点である。現在は、構成機関からの意見を集約しつつ、具体的な活動を始めようとしているところである。
一方の静岡大学防災総合センターは、昨年6月に大学内で設置が認められ、7月から組織と人事の検討作業に入った。そして、ようやくこの春にスタッフの全容が整ったところである。専任教員は2名、林能成(ルビ:よしなり)さんと牛山素行(ルビ:もとゆき)さん(どちらも准教授)である。林さんは、名古屋大学災害対策室から来た地震防災の専門家であり、大学で地震学を学んだ後、JR東海で地震時の列車自動停止システムの運用にかかわるなどの異色の経歴の持ち主(新幹線の運転免許所持者)である。経験の豊富さでは牛山さんも特筆すべきで、京都大学防災研究所・東北大学災害制御研究センター・岩手県立大学と渡り歩き、気象災害・災害情報の研究で名高い。二人とも今をときめくアラフォー世代、中身も見かけも(?)脂の乗った研究者である。この二人を、学術研究員の坂下文香(ルビ:ふみか)さんと、筆者も含めた数名の併任・客員教員と事務補佐員が支えている。
静岡大学防災総合センターは、地域社会との密接な連携のもとに、従来の防災施策の効果検証を含む独自の防災科学研究を推進するとともに、その成果に裏づけられた質の高い教材開発や防災教育を実践することによって、学内および地域の防災力・危機管理能力の底上げをめざしている。また、地域の「防災ホームドクター」として、可能なかぎり地元行政や市民のニーズに応えていく所存である。まだ設立したばかりで準備不足の面が多々あるが、今後の活躍に注目してほしい。