(月刊地球,27,346-352)

富士山のハザードマップ―その作成経緯・特長・課題―

 小山真人(静岡大学教育学部総合科学教室)

Hazard map of Fuji Volcano: its making, merits, and problems to be solved
Masato Koyama

 富士山ハザードマップ計画の最大の特長は,マップの呈示だけで自己満足することなく,防災のための分厚いガイドラインを付すことによって,マップを危機管理に活かすための具体的な方策を示したことである.しかしながら,避難用に特化されたマップを,長い休止期にある火山で活用するためには,今後さらなる工夫と努力が必要である.

1.はじめに
 富士山ハザードマップ検討委員会は,3年間にわたる検討作業の成果として2004年6月29日に最終成果物のすべてを公表した.本論では,富士山ハザードマップの作成経緯を振り返るとともに,評価できる点や今後改善すべき問題点について論じる.

2.作成経緯
 富士山は,過去2000年間に数十回の噴火を繰り返した証拠があり,江戸時代の宝永四年(1707年)にも大規模かつ爆発的な噴火(宝永噴火)をした立派な活火山として,当初から気象庁の活火山リストに掲載されてきた.ところが,目立った地熱活動がないことや火山下の地震活動も低調であることから,20世紀までの富士山では,機器観測はおろか過去の噴火履歴調査についても,限られたものしか行われてこなかった.山体が大きいことや,五合目より上では地形や気象条件が厳しく電源や宿泊施設が限られることも,調査・観測の妨げとなっていた.
 そんな折り,富士山麓に設置されていた地震計が,富士山の地下10〜20km付近で起きる低周波地震の急増をとらえた(鵜川・中禮,2002).幸いにして,この現象は2000年10月〜2001年2月,ならびに2001年4〜5月の2期間だけにとどまり,これまでのところ大事に至っていない.しかしながら,この事件は,富士山下のマグマが依然として生きていることを如実に示すものであったため,大きく報道されて人々の関心を集めることとなった.
 この時点で富士山のハザードマップはまだ存在しなかったため,マップにもとづくべき火山防災対策もほとんど整っていなかった.そういった点を危惧する声が各方面から強まった結果,ついに富士山の火山ハザードマップ刊行計画がスタートすることになった.
 これまで日本の火山ハザードマップは,地元自治体(あるいは自治体の連合組織)が主体となって作成されるのが普通であった.ところが,富士山の場合は注目度が高く首都圏にも近いせいか,国(内閣府,国土交通省,総務省消防庁)が舵取りをする形で,まず国の行政官と地元自治体の首長からなる富士山ハザードマップ作成協議会(後に富士山火山防災協議会と改称)が結成され,その諮問を受けた形で富士山ハザードマップ検討委員会が2001年7月から活動を開始した(荒牧,2004).
 富士山ハザードマップ検討委員会の下には,マップそのものを検討・作成する「基図部会」と,マップを実際に防災対策に役立てる方策を検討する「活用部会」が組織され,それぞれの部会が正式会合をもつ他に,勉強会や地元市町村の防災担当者も交えた検討会を開催するなど,精力的な作業を続けた.
 さらに,富士山の噴火史調査が遅れていたことを重く見て,ハザードマップ作成のために必要な基礎データを緊急に得るための野外地質調査や古文書調査も並行して行われた.その結果,1707年宝永噴火や864年貞観噴火の詳細な推移解明や(小山,2002a;鈴木ほか,2003など),これまで玄武岩質火山では発生しにくいと考えられてきた火砕流の堆積物を広い範囲で複数確認する(田島ほか,2002)などの,大きな成果が得られた.
 富士山ハザードマップが具体的にどのような学術的検討を経て作成されたかについては,富士山ハザードマップ検討委員会のWebページ(http://www.bousai.go.jp/fujisan/)に詳細な記述があり,小山(2002b)や荒牧(2004)の解説もあるため,ここでは説明を省略する.

3.最終報告書
 前節で述べた経緯を経て,2004年6月29日に富士山ハザードマップ検討委員会の最終報告書(6葉の住民配布用マップ,1葉両面印刷の観光客用マップ,および地元行政担当者用の防災業務用マップ集を含む)が公表された.この報告書の全文とすべての図表が,内閣府防災担当のWebページで閲覧できるようになっている(http://www.bousai.go.jp/fujisan-kyougikai/).
 6葉の住民配布用マップは,1葉の全体図(共通おもて面)のほか,その裏面に印刷することを想定した富士市版,御殿場市版(以上,静岡県域),富士吉田市版(山梨県域),小田原市版,足柄上郡版(以上,神奈川県域)の5葉である.
 観光客用マップは,観光チラシにはさみこむ形での観光客への配布を想定したハザードマップであり,おもて面が噴火史や火山の恵み情報も含めたハザードマップ(ただし,既存火口分布と今後火口ができる可能性のある範囲のみを図示する簡便なもの),裏面が火山としての富士山に関するQ&Aとなっている.
 防災業務用マップ集は,富士山が噴火危機に陥った際に市町村の防災担当部署が使用することを想定したマップ集(A3判横型で全95ページ)である.
 これらの3種類のマップは,地元市町村がハザードマップを作成する際の基礎資料として位置づけられており,すべてに「試作版」の名が銘打たれている.現在,このうちの住民配布用マップをベースとした市町村版マップが次々と刊行され,実際に住民に配布されている(御殿場市,2004;富士市,2004;富士宮市,2004,富士山火山防災協議会,2004など).

4.評価できる点
 富士山ハザードマップ計画には,従来の日本の火山ハザードマップのそれと比較して,次の8つの特長があったと考えられる.すなわち,1)強力な作業体制,2)潤沢な予算,3)複数年度事業としての実施,4)新規の野外調査の実施,5)新しい方法論やノウハウの開発,6)噴火シナリオの呈示,7)地域防災計画への道筋設定,8)意見公募とそれにもとづく修正の実施,である.以下,個々の点について簡単に説明する.

1)強力な作業体制
 従来の日本の火山ハザードマップ作成においては,作成主体である自治体が通常ひとつの業者に作業を委託し,その成果品を発注者である自治体職員と学識経験者からなる委員会でチェックする体制が普通であった.これに対し,富士山ハザードマップ作成においては,内閣府・国土交通省・総務省消防庁という国の3機関が共同で事務局を形成し,この3機関および関係都道府県から選出された行政委員18名(ただし,異動による途中交代者があったため,のべ人数)と学識経験者16名とで検討委員会を構成するという,前代未聞の強力な体制が敷かれた.学識経験者の内訳は,火山学者8名,砂防学者4名,防災情報学者3名,ジャーナリスト1名.行政委員の内訳は,内閣府2名,国土交通省河川局3名,気象庁3名,総務省消防庁2名,都道府県庁8名である.
 また,事務局から複数のコンサルタント企業に対して,マップ作成にかかわる実作業が分割発注されたことも注目に値する.このため,良い意味での競争意識が企業間に働いたようである.また,あえて言うまでもないが,委員・事務局担当者・受注コンサルタント企業社員すべての間に,日本の象徴である富士山の初めてのハザードマップ作成作業に携わるという気概と熱意が満ちていた.

2)潤沢な予算
 従来の日本の火山ハザードマップ作成においては,一件に対して総額数百万〜数千万円の予算が組まれるのが普通であったが,富士山ハザードマップに対しては当初予算で7000万円,その後の補正予算などの追加分も数えると,おそらく総額で数億円の費用がかけられた.

3)複数年度事業としての実施
 従来の日本の火山ハザードマップの多くは単年度事業によって作成された.単年度事業の場合の実質的な作業時間は半年に満たないため,十分な調査・検討時間が確保できないことが普通である.このため,学識経験者の目から見れば,明らかに不十分な内容のマップが多かった.これに対し,富士山ハザードマップは当初から2年度にわたる事業として計画され,実際には1年延長された丸3年の時間をかけて作成・検討されたため,それなりに充実した内容となっている.

4)新規の野外調査の実施
 従来の日本の火山ハザードマップの多くは,新規の野外調査を実施せずに,研究論文等の既存の文献調査によって得られたデータをよりどころとして作成されていた.しかしながら,既存の噴火史研究の大半はハザードマップ作成を念頭においてなされているわけではないので,データ不足に陥る場合がほとんどである.そこを無理に押し通してマップを作成したため,見るに堪えないものも堂々と刊行されていた.これに対し,富士山ハザードマップ作成においては,マップ作成のために特化された新規の野外調査が精力的に実施され,第2節で述べたような本質的に重要なデータが得られた.

5)新しい方法論やノウハウの開発
 富士山ハザードマップの作成にともない,マップの作成や表現のための新しい方法論やノウハウの開発がなされた.たとえば,従来の日本の火山ハザードマップにおいては噴火現象別の危険範囲予測図が表示されることが多く,そのために全体が煩雑となり,住民の理解が追いつかない面があったと考えられる.この点をふまえ,富士山ハザードマップでは危険範囲予測を1枚の図面にまとめることと,単なる危険度表示ではなく推奨すべき防災行動の種類として表現することを選択した.たとえば,
「噴火しそうな時、噴火が始まった時すぐに避難が必要な範囲」
「すぐ危険にはなりませんが、火口位置によっては避難が必要な範囲です。公的機関から出される避難情報に注意して下さい。また、避難に時間のかかる人(お年寄りや入院患者等)は早めに避難して下さい」
「雪が積もっている時に噴火しそうになった場合に、沢や川には近寄らないようにする必要がある範囲」
などのように,具体的な行動指針の違いによってマップが色分けされている(図1).
(図1)

図1 富士山ハザ−ドマップ共通おもて面の中にある全体マップ.防災行動指針の違いによってマップが色分けされている.

6)噴火シナリオの呈示
 ハザードマップは加害現象の空間的な分布を示した図として有用であるが,現象の時間変化まで表現することは難しい.実際の火山噴火では,時間経過の中でさまざまな現象や事件が消長する.それらの推移予測を複数の噴火シナリオの形としてまとめ,生起確率予測値とともにイベントツリー図の形で事前に書き出せる場合がある.国外の火山では,このようなイベントツリー図が実際の噴火対応に役立てられたこともある.しかしながら,従来の日本の火山ハザードマップにおいて,噴火シナリオの呈示がなされたことはほとんどなかった.
 富士山ハザードマップ検討委員会は,富士山のイベントツリー図を試作した(最終報告書の第3.4.1図).生起確率の呈示まではできなかったが,これによって火山防災マップだけではイメージすることの難しい加害現象の組み合せや時間経過が,ある程度表現できている.また,次に述べる特長7と関連するが,最終報告書の第10章の章末資料には,このイベントツリー図にもとづいた火山情報の発信タイミングの考え方が示されている点に注目すべきである.

7)地域防災計画への道筋設定
 従来の日本の火山ハザードマップにおいては,その作成と配布が最終目標である場合がほとんどであり,マップをベースとした防災ガイドラインや防災計画が策定された例はまれであった.これに対し,富士山ハザードマップの最終報告書においてはマップの呈示だけにとどまらず,噴火の被害想定,ケーススタディによる防災課題の抽出と対応方針,火山との共生方策,火山防災対策のガイドライン,地域防災計画策定の際の留意点が示され,マップを実際の危機管理に役立てるための具体的な道筋が示されている(表1).このことは,富士山ハザードマップの数ある特長の中で,最も画期的と言えるものだろう.これらの記述のために,最終報告書240ページのうちの約4割にあたる98ページが費やされている.

表1 富士山ハザードマップ検討委員会の最終報告書の目次構成.カッコ内は各章のページ数.このうち,第2〜6章が基図部会,第7〜11章が活用部会の担当箇所である.

はじめに(2)
1.検討の目的と方針(4)
2.富士山の火山活動(17)
3.火山防災マップの対象現象(9)
4.ドリルマップの作成方法(42)
5.可能性マップの作成方法(14)
6.火山防災マップ(43)
7.噴火の被害想定(7)
8.ケーススタディによる課題の抽出と対応方針(19)
9.火山との共生(4)
10.富士山の火山防災対策について(37)
11.地域防災計画作成時の留意点(31)
おわりに(2)
本報告書で使用する語句の意味(3)
委員名簿,委員会の開催経緯(6)

8)意見公募とそれにもとづく修正の実施
 富士山ハザードマップ検討委員会は,2003年8月27日にハザードマップ原案(住民配布用マップのうち,おもて面にあたる全体版と,裏面にあたる富士吉田版,御殿場版,足柄上郡版の計4葉)を公表するとともに,同年9月20日〆切でマップ内容に対する意見公募を実施した.公募期間中には,静岡・山梨・神奈川の3県で1回ずつ説明会も開催された.その結果,説明会後に回収されたもの,市町村役場の意見箱に投函されたもの,インターネット上での原案呈示に対してメールで寄せられた意見をあわせて計147の修正意見が寄せられ,それらを考慮したマップの改良がなされた.

5.改善すべき点
 富士山ハザードマップ検討委員会の作業過程と結果には,今後改善すべき点もあると考える.すなわち,1)複雑な作業体制,2)事務局主導,3)避難目的への偏り,4)補助教材・普及プログラム等の不在,5)ボトムアップ的アプローチの不足,の5点である.以下,個々の点について簡単に説明する.

1)複雑な作業体制
 前節で「評価できる点」のひとつとして,国の機関,地方自治体,学識経験者,複数コンサルタント企業の連合体によってマップ作成が推し進められる「強力な作業体制」を挙げたが,同時にそれは大勢の人間と組織がかかわる,つまりは「船頭の多い」複雑な体制を意味しており,それゆえの欠点を内包していた.また,事務局の担当者や一部の委員・関係者は,東海地震防災体制の見直しや他の同時進行していた多数の防災関係プロジェクトにかかわる中で,富士山マップにも時間を割かなければならなかった.こういったことの影響は,検討スケジュールの間延び,議論の停滞・逆戻り,連絡・連携の不足などとして表われた.

2)事務局主導
 一般論として,政府機関や自治体が招集した委員会が,事務局つまりは招集側があらかじめ用意した(あるいは発注先の外郭団体や民間会社に用意させた)資料に対し,通り一遍の議論をした上で承認を与える機能しか持たない(いわゆる「お墨付き」だけを与える)例が多数ある.つまりは完全に事務局主導で,委員会は権威付けのためだけに利用されるわけである.
 富士山ハザ−ドマップ検討委員会は,そのような委員会のあり方とは一線を画しており,委員会内部でかなり本質的な議論が交され,その結果にもとづいてかなりの原案修正がなされたことがしばしばあった.しかしながら,やはり事務局主導が強く出た面がなかったとは言えず,役所特有の論理と科学の論理とが競合する場面では,予算と時間が限られていたこともあって,事務局が用意したものを大幅には修正させられなかった.
 こうした局面では,学識経験者側の意見不一致が命とりになる場合がある.火山防災上のさまざまな問題について,普段から関係者の間で十分な時間をとってフリーな議論をおこない,共通理解を深めておく必要性を感じる.

3)避難目的への偏り
 富士山ハザ−ドマップは,表1の最終報告書目次からもわかるように,ほとんどが噴火の際の住民・観光客の生命・財産保全の目的で作成されたものである.もちろん,そのことはハザ−ドマップの第一義的な目的であり,それに対して十分な時間と労力が費やされるのは正しい.
 しかしながら,この特長(避難用マップへの特化)は,同時に最大の欠点でもあると筆者は考える.富士山は長い休止期のただ中にある火山であり,次の噴火はまだ当分先かもしれない.つまり,避難用に特化されたマップは,今の富士山ではあまり使い途がないのである.このため,せっかく高まった火山への興味・関心もやがては風化し,次世代へと受け継がれない可能性が十分ある.
 ハザードマップは,火山山麓の長期的な土地利用やまちづくりを考える上での基礎資料となりえるし,郷土教育への利用も可能である.アイデアと工夫次第では火山観光地図として味付けし,地域振興に生かすこともできる(小山,2004).このような多彩な利用法を見据えた,親しみやすく魅力的な火山ハザードマップがすでに日本にもいくつか存在するが(たとえば,秋田県建設交通部砂防課・秋田県鹿角建設事務所,2002),富士山のマップは残念なことにまだそのレベルに達していない.単能的になったため,実用一点張りで平穏時使用の魅力に乏しく,マップ用途の多様な可能性にあえて目をつぶってしまっている.

4)補助教材・普及プログラム等の不在
 富士山ハザードマップ検討委員会最終報告書の第9章「火山との共生」では,他火山での実例を紹介しながら,富士山ハザードマップの補助教材や普及プログラムの作成が推奨されている.しかしながら,現時点においては,ハザードマップ検討委員会の委員個人が取り組んだわずかな例(小山,2003;小山ほか,2004など)や,国土交通省富士砂防事務所が東名高速道路富士川サービスエリアに設置したフジヤマビューギャラリーの展示施設(http://www.sabopc.or.jp/fujisabo/rakuza/index3.htm)などを除けば,公的かつ体系的な補助教材や普及プログラムはほとんど存在していない.

5)ボトムアップ的アプローチの不足
 学者が個人的に作成したいくつかの例を除いて,従来の日本の火山ハザードマップのほとんどは公的機関からトップダウン的に住民に呈示されたものであり,ユーザーである住民が主体となってボトムアップ的に作成されたマップは知られていない.それどころか,従来のほとんどのマップはクローズした体制で作成され,マップ作成についての学会報告や論文の数も少ないため,作成過程において得られた知見・ノウハウ・問題点などが,必ずしも学界の共有資産となっていなかった.さらには,マップ公表に至る前の段階で,行政府側のさまざまな思惑・意向・政治判断が加わることにより,マップの噴火想定・現象想定や表現方法が,学術的には不可解なものになったと思わざるを得ない例が数多くあり,公表されたマップが健全な批判にさらされる機会もほとんどなかった(小山,2001).そうした状況において,従来の日本の火山ハザードマップが,真に住民に理解しやすいマップとなっているかどうかは甚だ疑問の残るところである.
 前節で述べたように,富士山ハザードマップ検討委員会では,日本の火山ハザードマップとしておそらく初めて原案の段階での意見公募を実施した.ただし,公募期間は短く,意見の数や内容も限定的なものであり,十分な民意のフィードバックがなされたかどうかは疑問である.そもそもハザードマップの内容や表現方法自体がまだまだ研究段階のものであり,本当に今のやり方でよいのかどうかは別途検証が必要である.しかしながら,それらの検証作業が系統的に実施された例は,ハザードマップ検討委員が個人の努力として実施したもの(村越ほか,2004;中村・廣井,2004など)以外には,ほとんど知られていない.

6.おわりに
 以上,富士山ハザードマップの作成経緯を振り返るとともに,評価できる点や今後改善すべき問題点について論じた.
 富士山ハザードマップ検討委員会は2004年6月で最終回となったが,広域防災対策の基本方針や火山との共生方策をさらに煮詰めていく目的で,2004年11月から内閣府・総務省消防庁・国土交通省が事務局となって「富士山火山広域防災検討会」が設置され,その下に「富士山火山共生ワーキンググループ」が置かれることとなった.両者は,2004年度末をめどに,富士火山における広域防災計画のあり方ならびに富士山との共生のあり方をとりまとめ,富士山火山防災協議会に報告することになっている.また,富士山麓の地元自治体が,県域の枠を越えた「環富士山火山防災協議会」の結成を準備中である.さらには,2005年度の火山砂防フォーラムは富士山麓で開催予定と聞いている.
 以上のように,富士山ハザードマップに関連した行政側の動きは今も活発であり,こうした状況の中で,本論で挙げた課題解決の機会を今後もさぐっていきたいと考えている.

引用文献
秋田県建設交通部砂防課・秋田県鹿角建設事務所(2002):秋田焼山火山防災マップ.
荒牧重雄(2004):世界の富士山,山海堂,62-69.
富士宮市(2004):富士宮市富士山ハザ−ドマップ.
富士山火山防災協議会(2004):富士火山を知る.14p.
富士市(2004):富士市富士山火山防災マップ.
御殿場市(2004):富士山火山防災マップ.22p.
小山真人(2001):月刊地球,23,811-820.
小山真人(2002a):富士を知るー特集/富士山災害予測図,集英社,16-38.
小山真人(2002b):富士を知るー特集/富士山災害予測図,集英社,137-161.
小山真人(2003):富士山ふん火のひみつ.文溪堂,24p.
小山真人(2004):河川,no.694,25-29.
小山真人ほか(2004):地球惑星関連学会2004年合同大会予稿集,J035-P006.
村越 真ほか(2004):日本火山学会2004年秋季大会予稿集,A43.
中村 功・廣井 脩(2004):月刊地球,号外no.48,186-192.
鈴木雄介ほか(2003):地球惑星関連学会2003年合同大会予稿集,V055-P015.
田島靖久ほか(2002):地球惑星関連学会2002年合同大会予稿集,V032-018.
鵜川元雄・中禮正明(2002):富士を知るー特集/富士山災害予測図,集英社,162-172.


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