伊豆新聞連載記事(2012年4月29日)

伊豆ジオパークへの旅(98)

大地の公園(19)伊豆半島ジオパークに向けて

火山学者 小山真人

 

 昨年3月の伊豆半島ジオパーク推進協議会の設立からはや1年が経過し、今年はいよいよ日本ジオパーク認定のための国内審査を受ける年である。申請書を4月に提出して書類審査を受けた後、5月20日に他のジオパーク候補地ともども日本ジオパーク委員会の口頭審査を受けることになる。その後、7〜8月のどこかで審査委員の現地審査を受ける。順調に行けば、9月末くらいに日本ジオパークネットワークの正会員として認定され、ようやく公式に「ジオパーク」を名乗れることになるだろう。しかし、それはまだ第一歩にすぎない。本連載の第42回で述べたように、その先には世界ジオパーク候補地としての推薦のための国内審査、世界ジオパーク認定のための国際審査、その後の4年毎の継続審査などの長い道のりが待っている。
 とはいえ、伊豆半島ジオパーク推進協議会の事務局とその関係者は、この1年めざましい活動をおこない、着実な実績を挙げてきた。協議会が主催・共催・講師派遣した講座やジオツアーは、小学校低学年から高齢者までのさまざまな層を対象に68回を数え、現在までの参加者はのべ3300名、関係NPOやガイド団体、観光協会等が行ったものを含めると214回、約8200名となる。さらに、関連イベントとして、伊豆半島のジオサイトを対象としたフォトコンテストやフォトツアー、火山実験教室なども実施された。
 また、ジオパークを支える人材を育成するためのジオガイド養成講座が開催され、伊豆全域から51名が受講した。さらに、この講座の修了生を対象とした実地試験がおこなわれ、31名がジオガイドとして認定された。その後、これらの人材を中心として、ツアー企画や商品開発、地層のはぎとり保存、ジオサイト清掃活動などの取組みが始まっている。ジオサイトの解説看板の設置も始まり、現在までに伊東市と下田市内の12か所に設置されている。教育分野では、伊豆総合高校がジオパーク構想を取り入れた学習活動を展開し、生徒が企画運営するジオツアー(10回)や小学校への出前授業(4回)、複数校が連携した学習会等などが実施されている。
 こうしたさまざまな取り組みに関わったすべての方々の努力をねぎらい、ここに深く感謝を申し上げたい。上記したように、世界ジオパーク認定とその継続の道のりは長く険しいものであるが、地元の人々が一丸となって取り組む姿は、伊豆半島の未来への大きな希望を感じさせるものである。
 この連載では、この後も伊豆各地のジオサイト候補地の価値と魅力について詳細に語っていくつもりだったが、ここでいったん筆をおくことにする。またいつか、読者のみなさんにお会いしたいと考えている。

 

一碧湖畔に設置されたジオサイト解説看板

 

伊東市内の工事現場に出現した過去6万年分の火山灰層。ジオパーク推進協議会事務局によって、はぎとり保存された。いずれどこかに展示される予定。

 

 


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