伊豆新聞連載記事(2011年5月29日)

伊豆ジオパークへの旅(51)

伊豆ジオパークの目標(11)ジオパークと防災(1)

火山学者 小山真人

 2008年のユネスコ国際ジオパーク会議で採択された宣言で、「地質災害に関して社会と知識を共有するためにジオパークが役に立つ」という趣旨の一文が盛り込まれ、ジオパークにおける防災教育・防災対策の重要性への認識が世界的に進みつつある。また、ジオパーク認定のための重点項目として「ジオパーク内の住民、訪問者に対するリスクの分析に基づく、安全・防護対策の状況(ハザードマップの作成と周知、防護柵等の安全施設や避難施設の設置ほか)」が掲げられている。
 伊豆半島はプレート境界付近に位置し、活発な地震・火山活動がくり返されている場所である(本連載第1部第99〜108回)。過去に伊豆半島に大きな地震被害を起こし、今後も被害を与えると考えられている地震としては、東海地震・関東地震の2つのプレート境界地震のほか、小田原地震(神奈川県西部地震)ならびにプレート内の活断層が起こす地震、伊豆東部火山群のマグマ活動が引き起こす群発地震がある。こうした地震のうち、海域で起きるものは津波を引き起こす可能性もある。過去のプレート境界地震としては1854年安政東海地震と1923年大正関東地震、プレート内地震としては1930年北伊豆地震、1974年伊豆半島沖地震、1978年伊豆大島近海地震などが、近年の伊豆に大きな被害を与えた例である。また、近い将来、東海地震や小田原地震の再来が心配されている。
 伊豆半島に噴火災害を与える恐れのある火山としては、1989年7月に伊東沖で海底噴火を起こした伊豆東部火山群のほか(同123〜126回)、隣接した活火山である富士山、箱根山、大島を始めとする伊豆七島の活火山が考えられる。一方、伊豆半島は地形が急峻な上に降水量が多いため、風水害と土砂災害が頻発してきた土地である。近年では1958年狩野川台風による大きな被害が注目されるが、最近でも2004年10月の台風22号による伊東市内の被害が記憶に新しい。伊豆半島や他の静岡県内で過去に起きた自然災害については、静岡県地震防災センターのホームページ内にある「静岡県市町村災害史」で自治体ごとに簡単に検索することができる。
 自然災害の予防や軽減のためには、事前の災害予測や発生危険が高まった時の防災情報伝達が有効である。伊豆地域の災害予測に関しては、ハザードマップの作成と周知が災害の種類ごとに広く行われている。また、防災情報についても、災害の種類ごとにさまざまな情報が発表されることになっている。



伊豆半島の自然災害に関する主なハザードマップ(ネット上に公開されているもの)

東海地震ならびに神奈川県西部地震(小田原地震):静岡県第3次地震被害想定
地震一般:地震ハザードステーション(防災科学技術研究所)
伊豆東部火山群:伊豆東部火山群の火山防災対策検討会報告書(静岡県危機管理部)
富士山:富士山火山防災マップ(内閣府・国土交通省・総務省消防庁)
水害:浸水想定区域図(静岡県河川砂防局)
土砂災害:土砂災害情報マップ(静岡県河川砂防局)
総合防災マップ:ハザードマップポータルサイト(国土交通省)、各市町の防災関連ホームページ

 

伊豆半島の自然災害に関する主な防災情報

東海地震に関連する情報、緊急地震速報、津波に関する予報・警報(気象庁)
地震一般に関する情報・評価(気象庁、地震調査研究推進本部、地震予知連絡会)
伊豆東部火山群の地震活動の予測情報(気象庁)
伊豆東部火山群と富士山の火山活動に関する予報・警報・評価(気象庁、火山噴火予知連絡会)
気象一般に関する予報・警報・情報(気象庁、静岡地方気象台)
リアルタイム豪雨表示システム(静岡大学防災総合センター牛山研究室)
台風に関する情報、洪水に関する予報・警報・情報、土砂災害警戒情報(気象庁)
さまざまな防災情報(国土交通省防災情報提供センター、沼津河川国道事務所など)
静岡県土木総合防災情報サイポスレーダー、静岡県緊急・危機管理情報(静岡県)

 

伊豆半島のハザードマップの例(松崎町の津波ハザードマップ)

 


もどる