伊豆新聞連載記事(2011年5月1日)

伊豆ジオパークへの旅(47)

伊豆ジオパークの目標(7)ジオサイト、ジオガイド、ジオツアー

火山学者 小山真人

 本連載の第15回で述べたように、ジオサイトは、ジオパークのテーマやストーリーを楽しみながら学べる目玉スポットであり、既存の観光スポットに新たな解説を加える形で設置することもあるし、まったく新しいスポットとして整備する場合もある。個々のジオサイトでは、観光客の安全や便宜を図りつつ、ジオツーリズムを可能とするさまざまな設備(案内標識、説明板、遊歩道、見晴台、安全柵、駐車場、トイレ等)が必要である。
 この中で、とくにジオサイト説明板はジオパークには必須の設備と言ってよいものであり、実際にどこのジオパークにおいても多数設置されている。一目でジオサイト説明板とわかるように、公式ロゴマーク・キャラクターを配し、統一されたデザインをもつ必要がある。また、景勝地においては、風景の鑑賞や写真撮影の妨げにならないものが望ましいし、説明板自体も風景に溶け込む色合いやデザインを備えるべきである。大型板の設置が不適当な場所には、補助的な小型板も必要となるだろう。また、設置費用を考えると、既存の看板の中身だけを変えたほうが現実的な場合もあるだろう。
 しかしながら、しょせんは一枚板である制限から、説明板の内容は簡単なものにならざるをえない。それを補い、風景・風物にひそむ物語の発見や謎解きの楽しみ方をビギナーに手ほどきするのが、ジオパークにおけるガイド(ジオガイド)の役割である。このため、ジオガイドの養成プログラムの実施体制と実施状況は、ジオパーク認定の際の重要な評価項目のひとつになっている。ところが、これまで観光地でジオを楽しむという視点がほとんどなかった日本では、その手ほどきができるガイドの数はごく限られている。伊豆半島においても、ジオに関する豊富な知識と、プロのガイドとしてのスキルを兼ね備えた良質なジオガイドの養成システムを早急に確立する必要がある。
 さらに、説明板や説明資料などをそろえ、養成したジオガイドをビジターセンターや案内所に配置しても、ただ待っているだけでは観光客は増えないだろう。積極的にさまざまなジオツアーを企画したり、魅力的な関連イベントを開催して集客していくべきであり、またそうしたニュースが報道されれば潜在観光客の関心を招く効果がある。実際に各地のジオパークは、こうしたツアーやイベントをくり返すことで、その存在をアピールし続けている。



ジオサイト説明板の例(伊東市の城ヶ崎海岸を想定した大型のもの)

 

ジオツアーやジオパーク関連イベントの例

 


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