伊豆新聞連載記事(2011年3月27日)
火山学者 小山真人
伊豆半島ジオパーク構想指針書の第1章にはジオパークとは何かについての説明を詳しく書いた。こうしたジオパークの定義については、本連載の第2回で簡単にふれたのみだったので、あらためてここで説明しよう。
ジオパークとは、大地(ジオ)が育んだ貴重な資産を多数備えた地域が、それらの保全と活用によって経済・文化活動を高め、結果として地域振興につなげていく仕組みである。
ここで言う経済活動は、主として観光およびその関連産業のことを指し、ジオパークへの観光客の誘致やツアー実施等にとどまらず、ジオに関連した観光商品の開発、ジオパークの観光スポット(ジオサイト)の保全・整備・防災・安全確保のための事業、ジオにちなんだ地域の特産物や土産物の開発などが例として挙げられる。
また、文化活動としては、観光案内人(ジオガイド)等の人材育成、ジオパークを支える次世代の若者への教育と地域への回帰促進、ジオパークのテーマに沿った芸術の創作と発表、ジオサイトそのものの研究や新たなサイトの開発などが挙げられる。いずれもうまく機能させれば、地域社会の活性化と振興に役立つと期待されるものである。
ジオパークには「世界ジオパーク」と「日本ジオパーク」の2つのレベルのジオパークがある。世界ジオパークは、ユネスコが支援する世界ジオパークネットワーク(2004年設立、本部はパリ)の審査を受けることによって認定される。日本ジオパークは、世界ジオパークの下位のレベルとして位置づけられており、日本ジオパーク委員会(2008年設置、事務局は独立行政法人・産業技術総合研究所)の審査を受けて認定される。
2010年度末時点で25ヶ国の77地域が世界ジオパークとしての認定を受けている。日本においては、日本ジオパークとして認定された地域が14地域あり、その中の4地域(島原半島、洞爺湖有珠山、糸魚川、山陰海岸)が世界ジオパークとしての認定も受けている。
ジオパークを名乗りたい地域は、十分な活動実績を積んだ上で、まず日本ジオパーク認定のための国内審査を受ける。この審査をパスすれば日本ジオパークを名乗れるようになる。次に、設備・資料・ガイド等の充実と多国語対応をはかり、外国人観光客に対する実績も重ねた上で世界ジオパークへ推薦してもらうための国内審査を受ける。この審査に通ると、いよいよ世界ジオパークの国際審査を受けることができ、その審査をパスすれば晴れて世界ジオパークを名乗れるようになる。つまり、世界ジオパークとして認定されるまでには3回の審査をパスしなければならない。
ジオパークのしくみと目的
伊豆半島が世界ジオパーク認定を受けるまでのフロー(理想的に運んだ場合)