伊豆新聞連載記事(2011年3月20日)

伊豆ジオパークへの旅(41)

伊豆ジオパークの目標(1)ジオパーク構想指針書

火山学者 小山真人

 前回まで26回にわたって、「伊豆ジオパークの構成」と題して各地の主なジオサイト候補地の具体的な価値や魅力を概観してきた。その間に事態は大きく進展し、伊豆半島ジオパーク構想がいよいよ現実のものになろうとしている。沼津市も含めた伊豆半島の7市6町が中心となって、3月28日にジオパークの運営組織となる「伊豆半島ジオパーク推進協議会」が設立される予定である。それに先立って静岡県は2月25日に「伊豆半島ジオパーク構想指針書」を公表し、静岡県観光局のホームページで全文が閲覧できるようになっている。実は、この指針書は県からの委託を受けて、そのほとんどを筆者が執筆したものである。
 指針書の大まかな中身を述べると、(1)ジオパークとは何か、(2)伊豆半島の地学特性、(3)ジオパークのテーマ、(4)ジオサイト、(5)望ましい運営体制、(6)ジオパークの普及活動、(7)ジオガイドの養成と認定制度、(8)ジオパークと学校教育、(9)ジオパークの保全、(10)ジオパークの安全・防災対策、(11)ジオパークと地域振興、(12)ジオパークの中期計画と長期計画、の全12章から構成され、資料編としてジオサイト暫定候補地リスト、モデルコース、ジオサイト説明板サンプルなどが付けられている。このうち(3)と(4)の内容については、本連載で書いてきたことを加筆・修正した上で大幅に取り込んだ。
 その後、地元の方々からジオサイト暫定候補地リストへの追加を希望する場所の情報をいくつか頂いている。その多くはすでに筆者が把握していたものであるが、そうでなかったものもある。まず誤解してほしくないのは、ジオサイトはいわゆる「見学スポット」ではなく、ある程度の広がりをもつ「範囲」を指定するものである。そのため、筆者が把握していたものについては、明示はされていなくても何らかの形で候補地に含まれていると考えてほしい。
 さらに、伊豆の山々を30年以上かけて踏査している筆者といえども、まだまだ把握しきれていないものはあるし、行くたびに新たな発見がある。それも主に地質学者としての筆者の視点からの発見であり、視点を変えれば、筆者が発見できないものを発見することは容易であろう。そもそもジオパークというのは、こうした発見を市民レベルで楽しむ場所なのである。だから、現在の候補地リストは文字通り「暫定」のものであり、今後拡充されていくだろう。ただし、当然のことながら予算上の制限があるために、今後各市町で整備の優先順位がつけられ、整備を終えたものから正式なジオサイトとして指定されることになる。



伊豆半島ジオパーク構想指針書。冊子の部数はごく限られるため、県観光局のホームページで閲覧してほしい。

 


伊豆半島ジオパーク構想の仮ロゴマークと仮キャラクター。公式のものは近日中に公募されるもよう。

 

 

もどる