伊豆新聞連載記事(2010年9月26日)

伊豆ジオパークへの旅(17)

伊豆ジオパークの構成(3)伊東ジオエリア(上)

火山学者 小山真人

 今回より、将来の伊豆ジオパークの地域区分となる13のジオエリア(飛び地を含む)について、それぞれの概要とエリア内のジオサイト候補地の見どころを順不同で紹介していこう。
 伊豆半島の北東部に位置する伊東ジオエリアは、行政区としては伊東市のほぼ全域に相当する。このエリアの地学的な特色は、何と言っても大室山・伊豆高原・城ヶ崎海岸などに代表される、伊豆唯一の活火山・伊豆東部火山群がつくった新鮮な地形と造形である。それより古い時代に噴火した陸上大型火山や、陸化以前の海底火山時代の地層も分布するが、限定的なものである。
 伊東ジオエリア内のジオサイトとして次の候補を考えた。すなわち、宇佐美・御石ヶ沢、手石海丘(ていしかいきゅう)、伊東温泉、汐吹崎・川奈、城星(じょうぼし)、小室山、一碧湖・梅木平(うめのきだいら)、富戸・城ヶ崎海岸北、城ヶ崎海岸南、伊雄山(いおやま)・赤窪、矢筈山(やはずやま)、池、大室山、奥野・門野、鉢ヶ窪・小川沢の15ジオサイトである。このうちの手石海丘は海底火山であるが、1989年の伊東沖海底噴火を起こした火山であること(本連載第1部第125回)、海底地形が明瞭であり現在も噴気などの地熱活動が見られること、将来的には潜水艇や海中カメラなどのツアーがありえることを考慮して候補地に含めた。
 手石海丘以外のジオサイト候補地も概観していこう。宇佐美・御石ヶ沢ジオサイトでは、伊豆の陸上大型火山のひとつである宇佐美火山(同34回)の溶岩流の断面がよく観察でき、それらを採石した江戸時代の採石場跡(同134回)がよく残されている。伊東温泉ジオサイトは、伊東市役所が建つ物見が丘溶岩台地(同62回)と、その下の平野に広がる由緒ある温泉街が魅力である。城星ジオサイトの見どころは、運動場として利用されている城星火山の火口(同63回)や、その付近から流れ下った溶岩流である。汐吹崎・川奈ジオサイトでは、地震にともなう隆起の証拠とみられる海岸地形や、岩にへばりついた生物殻の密集層が残されている(同113回)。小室山ジオサイトでは、小室山火山がつくった複数の溶岩台地(同75回)、吉田盆地などのせき止め湖の地形とそれらの土地利用、ならびに周囲の火山地形をよく概観できる山頂の展望台が魅力である。一碧湖・梅木平ジオサイトでは、爆発的噴火によって生じた火口に水がたまってできた一碧湖と沼池(同52回)が最大の見どころとなっている。

 

伊東ジオエリアのジオサイト候補地とその見どころ。灰色の太線は主要な分水嶺。

 

空から見た伊東ジオエリア南部(白尾元理氏撮影)。手前の入り江は川奈港。

 

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