伊豆新聞連載記事(2009年4月5日)

伊豆の大地の物語(84)

伊豆東部火山群の時代(44)大室山(3)

火山学者 小山真人

 大室山の噴火は何年ほど続き、どのような推移をたどったのだろうか? 溶岩流はいつ流れ出したのだろうか? こうした疑問は、火山のまわりに降りつもった火山灰を調べることによって解決可能である。火山灰の中には、噴火の推移を知るためのさまざまな情報が含まれている。調査の結果、大室山の火山灰は全部で5層(下からA、B、C、D、Eの各層)に区分できることがわかった。
 一番下にあるA層は、岩のかけらを多く含む層であり、大室山の東の狭い範囲(伊豆ぐらんぱる公園や東大室方面)にしかない。この岩のかけらは、おそらく最初に火口が開いた際に、火口の壁からはぎとられたものである。A層の分布範囲が狭いことから、風向きが変わらないうちに、つまり数日くらいの短い間に降りつもったとみられる。この段階では火口ができただけで、大室山そのものはできていないし、溶岩も流れ出さなかった。A層とB層の間には、薄くて茶色い層がはさまれている。この層の厚さは火口に近づいても変わらないので、火山灰ではなく、土ぼこりの層と考えられる。つまり、ここで数年ほど噴火を休んだらしい。
 B層は黒い火山灰である。A層以外は大室山を中心として楕円形に分布することから、噴火中に何度も風向きが変わった、つまり噴火が長い期間続いたことがわかる。B層の中には木の葉の化石も発見されている。ただし、前述した土ぼこりの層以外には、噴火が長く中断した証拠が見つからないので、噴火全体が長くても10年以内に終わったとみられる。
 C層は、スコリア(暗色の軽石)と火山灰が交互に重なる地層であり、スコリアには黒いものと赤やオレンジのものがある。大室山の近くでは、火山弾も含まれている。また、大室山からころがり落ちてきたとみられる岩もある。つまり、この頃になって大室山が高い山に成長したことがわかる。また、最初の溶岩流が、大室山の西のふもとから流れ出したのも、この頃である。
 D層は細かな黒い火山灰であり、噴火の最終局面で地下水とマグマがふれ合って爆発性を増したらしい。前回述べた岩室(いわむろ)山と森山から大量の溶岩が流れ出したのが、この時期である。なお、E層はスコリアと岩のかけらで、大室山のごく近くにしかなく、前回述べた大室山の南斜面の小火口から吹き出たとみられている。

 

大室山の西のふもとに降りつもった火山灰層の断面。


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