伊豆新聞連載記事(2009年3月8日)

伊豆の大地の物語(80)

伊豆東部火山群の時代(40)川奈南・台ノ山・アラ山・赤坂南

火山学者 小山真人

 噴火した年代がまだよくわからない火山が、伊東付近にもいくつかある。
 本連載第75回で述べた小室山の南東1500メートルほどの川奈ゴルフ場内に、標高110メートルの小高い丘がある。この丘は、小室山や大室山などと同じスコリア丘(きゅう)(川奈南火山)であり、流れ出た溶岩が500メートルほど東の海岸に達している。スコリア丘は、これまで何度か説明してきた通り、溶岩のしぶき(スコリア)が火口のまわりに降りつもってできた小型の火山である。川奈南火山の噴火年代については、小室山(1万5000年前)より古く、梅木平(10万3500年前)より新しいという程度のことしか言えなかった。しかし、最近になって近くの道路工事現場の崖で、川奈南火山起源とおぼしきスコリア層が見つかった。まだ不確かな点もあるが、他の火山灰との関係から、川奈南火山の噴火年代を約3万1000年前と見積もることができた。
 大室山の南西に伊東市池(いけ)の集落があり、そのすぐ西側は水田の広がる盆地となっている。この盆地の北に、標高360メートルのドーム状をした台ノ山(だいのやま)がそびえている。台ノ山は、粘りけの多い溶岩が火口のまわりに盛り上がってできた溶岩ドームである。
 一碧湖(いっぺきこ)の南側に広がる高原は、およそ4000年前に噴火した大室山の溶岩流におおわれた場所であり、元あった地形の凹凸は溶岩に埋め立てられている。ところが、一碧湖の南1キロメートルほどの別荘地内に直径200メートル、高さ20メートルほどの小さな丘があり、丘の頂には火口とみられる凹地がある。調査の結果、この丘は溶岩流に埋め残された古いスコリア丘と判明し、付近の地名をとってアラ山火山と名づけられた。
 南伊東駅の南東1500メートルほどの山中に、直径300メートルほどの円形の凹地がある。この凹地の北端を通る道路ぞいの崖には、火山弾を多数ふくむ爆発角れき岩が見られ、この凹地が爆発的噴火によってできたマール(赤坂南火山)であることがわかった。マールは、火口のくぼ地だけが目立つ火山のことであり、一碧湖などもその仲間である。
 台ノ山・アラ山・赤坂南の3火山は、いずれも大室山よりは古いとみられるが、詳しい噴火年代は不明のままである。

 

西側から見た川奈南火山。遠くに見える島は伊豆大島。

 

南側から見た台ノ山(だいのやま)溶岩ドーム。手前は池の盆地。


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