伊豆新聞集中連載記事(2006年12月25日)

大室山がつくった伊東の大地(2)

伊豆高原誕生させた溶岩流

 大室山の噴火は,伊豆半島の大地にさまざまな変化をあたえた.噴火のさなかに,大室山の北東側と南側のふもとの2ヶ所から大量の溶岩が流れ出した.これらの溶岩流は,谷間や盆地を埋め,噴火の前はでこぼこだったはずの山地を,現在のような平坦な台地に変えてしまった.伊豆高原の誕生である.
 大室山から北に向かった溶岩流は,一碧湖(いっぺきこ)の西岸をかすめ,城山の南東で松川に流れ込んだ後,さらに北に1kmほど流れ,鎌田の近くまで達した.東に向かった溶岩流は現在の伊豆急行富戸駅付近から谷間を東に下って海に達し,海に張り出した扇状地をつくった.この扇状地の上につくられた町が,今の富戸の温泉街である.
 南に向かった溶岩流は, 鹿路庭(ろくろば)峠の東側にあった谷間の出口をふさいでしまった.このため,川がせき止められて,一碧湖2個分くらいの広さの湖ができた.この湖は,その後まわりの山から流れ出た土砂でじょじょに埋め立てられ盆地となった.この盆地につけられた「池」という地名は,かつてそこにあった湖に由来する.大室山の山頂から天城山方面を眺めると,大室山の溶岩が谷間をせき止めて盆地をつくった様子が,今でもはっきりとわかる.
 南東に向かった溶岩流はもっとも量が多く,払(はらい)から八幡野にいたる4kmほどの範囲で海に流れ込み,かなりの面積の海を埋め立て,城ヶ崎海岸がつくられた.城ヶ崎海岸の遊歩道を歩くと,溶岩流がつくったさまざまな地形や造形を観察することができる.
 大室山のふもとの溶岩流のわき出し口には,最後にねばりけの強い溶岩が上ってきてフタをした形になっている.これが伊豆シャボテン公園のある丘の高まりである.
 大室山から出たものは溶岩流だけではなく,大量の火山灰も空高く巻き上げられ,伊豆半島東部から中部の広い範囲をおおった.伊東市内の工事現場などの崖でしばしば見られる真っ黒いしましまの地層は,大室山の噴火で降りつもった火山灰である.

大室山の噴火がもたらしたもの.同心円状の楕円は,大室山の噴火で降り積もった火山灰の厚さ分布(単位はcm).


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