□養和元年(1181または1182初頭)崩壊?

 著者不明だが15世紀後半に成立したと考えられている『立川寺年代記』(りゅうせんじねんだいき)に「養和元年(中略)此年富士山峰崩」という簡単な記述がある.国史大辞典によれば,同史料は富山県の立川寺において当時の僧が編纂したらしいが,記事に誤りが多く十分な史料批判が必要であるとされている.史料の文面を信頼すれば,養和元年(1181年1月17日〜1182年2月4日の間)に富士山に規模の大きな崩壊が起きたことになる.この時期に富士山地域での地震をふくむ他の天変地異記録は知られていないが,史料の欠落が十分あり得る時期ではある.京都で書かれた日記では,『玉葉(ぎょくよう)』に養和元年一月八日(1181年1月24日),『吉記(きっき)』に養和元年三月七日(1181年4月22日)の有感地震の記録がある(いずれも被害の記載はなし).今後の検討事項であろう.


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